||地域振興研究||    調査のねらい調査概要調査結果考察

車椅子の走行調査に基づく道路段差等に関する研究
1.調査のねらい

 近年、福祉のまちづくり−バリアフリー化が自治体の大きなテーマとなっている。
 そこで、車椅子で移動する場合、不都合な段差、乗り越える場合の条件等を、実証的に調査しようとしたものである。

2.調査概要

1.道路走行調査
 (1)調査場所
  ・人口約6万人の地方都市
  ・従来の中心商店街を通る国道(県管理)の沿道(片側約800m、往復約1,600m)
  ・一部段差解消が図られているものの、計画的に行われたものではない
 (2).調査方法
  @電動車椅子を利用
    ・手動車椅子は操作する者の体力や技能によって動きに大きな差が生じるため、比較的差が生じない電動車椅子を利用
    【電動車椅子の仕様】
     ・EURO-FLEX(6輪)・重量60kg(屋内移動用を屋外で利用)
     ・駆動車輪:直径225mm×幅50mm、前後車輪125mm×40mm
     ・カタログ上の乗り越えられる段差は25mm
  A乗車した者
    ・40歳代の男性。体重+荷重合計約80kg
  B実走方法
    ・主に歩道を走行し、乗り越えの可否を確認
    ・概ねの段差を計測
    【計測を行う場所】
     ・国道と交差する道路との段差部や横断歩道部(46箇所)
    ・段差解消等が図られている部分などその他(10地点)
2. 乗越実験
 ・10〜50mmまでの段差を設け、段差に垂直に進入して乗り越えられるか否かの実験を行った
    
 ・乗車荷重を0、20、40、80kgの4ケースを調査した 
 ・上記と同じ理由により下の3種類の電動車椅子を利用した

機 種
タイヤ半径(単位:cm)
空車重量(単位:kg)

前輪

中輪
後輪
@ MINI-FLEX
6.25−中空
10−駆動輪−中空
45
A EURO-FLEX(6輪車)

5.5−硬質ゴム

9−駆動輪−中空
5.5−硬質ゴム
60
B クイッキーP210
8.5−中空
12−駆動輪−中空
100

 

3.調査結果

1.道路走行調査結果
 (1)国道と交差する道路、横断歩道部における段差が
  ・11箇所(11/46箇所)はまったく段差を乗り越えられなかった
  ・極めて困難であったが、乗り上げを繰り返してた結果、超えられた箇所が2箇所あった
  ・同一箇所でも、部分によって段差が異なり、乗り越えられなかった場合もあった
   《イメージ図》
        
  ・容易に乗り越えられる段差は30mmが限度であった
  ・段差が0であっても、その後のスロープの角度(長さ)によっては駆動輪が宙に浮いて乗り越えられない場合があった
 (2).その他段差部
  ・段差が20mm以下でも段差と水平に走行し、乗り越えようとすると乗り越えられない場合がある
  ・段差が20mm以下に切り下げられていても、車道−歩道部のスロープの勾配が急であると、駆動輪が空転し、乗り越えができない
    《イメージ図》
      
          
2. 乗越実験結果(○は乗り越え可、×は不可)


段差1cm
段差2cm
段差3cm
段差4cm
段差5cm
荷重/機種番号
@
A
B
@
A
B
@
A
B
@
A
B
@
A
B
0kg
×
×
20kg
×
×
×
×
40kg
×
×
×
×

80kg

×
×
×
×
×
×
×

 ・Aの機種は、前輪が横を向き乗り越えられなくなる場合が多い
4.考察

○調査結果から次のようなことがいえよう
 1.電動車椅子で乗り越えることができる段差は.概ね30mmである
 2.段差が許容範囲であっても次の4要素の条件によっては、乗り越えることができない場合がある
   @車椅子の能力 A乗車する者の体重 B段差の先の道路等の形状 C乗り越え方法
 3.タイヤは大きく、中空式(やわらかいもの)の方が乗り越えやすい

○道路整備では次の点に留意していく必要があろう
 1.最も望ましい段差は0であり、段差を設ける場合は20mm以下とする。30mmを超えると乗り越えが困難となる
   (建設省通達では20mm以下)
 2.段差を乗り越えた先は水平になっていることが望ましい
  
勾配を設ける場合はできる限り緩やかにすること  

ページトップに戻る